2012年5月8日火曜日

小さな園庭でも 2 敷地の用い方

〜「小さな園庭でも 1」の続き〜

ストックホルム郊外にあるVattendroppen(バッテン ドロッペン)野外保育園(以下、V 野外保育園)は、敷地面積600㎡弱の比較的小さな園だが、建物を敷地中央に配置してその周囲に菜園や集う場所・遊び場を設ける事で、子供たちに様々な活動を提供している。


門から入ってすぐの所には花壇があり、来園者を迎える。(図面下)
木もベリーの低木も草花も一緒に植えられていて、足下から目の高さまで様々に彩っている。
園庭の花壇はどれも子供たちと先生が一緒に植える

花壇は入口近く以外にも園庭の所々に設けられており、ベリーなどの食べられる植物も植えられている。
ベリーを園庭に植えるのはスウェーデンでは一般的で、実がなる時期には園庭中で口の周りを赤や紫にした子供たちが見られる。


建物南側には、門・花壇・砂場・テーブル・道具小屋がある。

門を入ってすぐの遊び場は、砂場
下の写真で 砂場の奥に見えるのは、子供たち一人ひとりのリュックサック。野外保育園では一日の大半を屋外で過ごすため、鞄も外に掛けておく。朝登園してここにさっと鞄を掛けたら、すぐに遊びに入って行ける。


砂場と建物の間には、屋根付きテーブル
その奥には、菜園。
テーブルでは、絵を描いたり本を読んだり、菜園や花壇のための仕事をしたり…。
昼食やおやつ時にもこのテーブルを使う。


子供たちが描いた絵は、こんな風に建物の壁に飾られる。



建物西側には、壁に沿って菜園が設けられている。(図面左)
ここでは、細長い菜園を設けて、細長い敷地を有効活用している。
菜園には散水スプリンクラーも付いている。

菜園は建物のすぐ傍にあり 前庭と後ろ庭をつなぐ位置にあるから、菜園の活動がとても身近なものになっている。
先生が菜園仕事をしていると、遊んでいた子たちも駆け寄って来て一緒に手入れを始める。


建物東側には食べ物屑を処理するコンポストや雨樋からの水を利用するための雨水タンクが置かれている。(図面右)
こうして得られる堆肥や水は、菜園や花壇に用いられる。



建物北側は、広めの遊び場となっている。(図面上)

丸太で仕切られた球技用のスペース。
園児の年齢ならゴールもこれくらいの大きさでも十分なようだ。

球技用スペースとは言っても多目的に使え、子供たちは、ゴロゴロッと置かれたタイヤを遊具にしたり、仕切りの丸太の出っ張りを利用して板と合わせてシーソーを作って遊んでいる。

円形の踏み石を並べて、ケンケンパをして遊ぶ姿も。

こんなにもシンプルな物や形が、子供たちの創造力を育む素晴らしい遊具になっている。

私はこれまで様々な園庭校庭を見学して来たが、木材や石・煉瓦など扱いやすくてシンプルな素材で子供が自由に使って遊べるようにしている園や学校では、子供が工夫して遊具を生み出していく姿を頻繁に見かけた。

球技スペースからさらに北側は斜面になっていて、冬にはソリやスキーをして遊ぶ。
こうした地形の凹凸が遊び場をより面白くしている


素朴な車やボートの遊具。
子供たちはきっと格好良い車や大航海船を思い浮かべながら遊んでいるんだろう。
(参照:森のムッレ幼稚園の園庭 2 遊具


こんな風に小さなテントも園庭中の所々に置かれている。
自分の幼少時代を思い出しても、小さな囲われた場所が好きだった。


建物南東側には集う場がある。(図面右下)
小屋と丸太が円形に並べられ、皆で輪になって座れるようになっている。

野外保育園では昼食もおやつも屋外で食べる。
この集う場も食事に使われる。

集う場の中央に、食事が並べられ、スウェーデンでは一般的なビュッフェ形式でふるまわれる。
用意された食事の中から、子供たちは自分で食べる物を選び 食べられる量を決めて取って行く。
先生は料理の前に座り、料理を取って行く子供たちを見守っている。
「何食べるの?」「チーズは要る?」…この配膳台の周りでは先生や友達との会話がたくさん生まれる。

園庭内での食べる場所はグループごとにおおまかに決まっているが、グループの中でも座る場所は自分で選ぶ。
ある子は陽の当たる岩の上を選び ある子は丸太のベンチを という風に、自分の好きな場所を見付ける。
今話をしたい子の隣に座って、友達との会話も弾む。

ある程度まとまりを持った中の、この自由度
とても自然体で、子供たちの意志も働き、良いなと思う。


年齢の小さな子はお昼寝も この集う場の小屋でする。
日差しや小屋の中の暗さ・頬を撫でる風・木の葉の音や鳥のさえずり…それらに感覚や感情を心地良く刺激されながら眠りに入る
なんて気持ちが良さそうなんだろう。

***

小さな園庭 1, 2で見て来たように、
子供たちが体と頭と心をめいっぱい働かせて遊んで学べる園庭は、敷地の大きさ次第ではない。
小さな敷地であっても、土地の使い方次第なのだ。


日本でも、楽しい園庭がもっともっと増えるといいな。





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