さぁ、スウェーデンの園庭についての記事もようやく一段落となります。
これまでこのブログで紹介してきた野外保育園の園庭は、敷地が広いものでした。
記事を読んで下さった方の中には、「広いからこそ出来る環境の良さだ」と思われた方もいらっしゃるでしょう。
けれど、良い屋外環境は 敷地がそれほど広くなくても作ることが出来るのです。
その好例として、ストックホルム郊外にあるVattendroppen(バッテン ドロッペン)野外保育園を紹介したいと思います。(以下、V 野外保育園)
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V 野外保育園の敷地面積は600㎡弱。
子供の数は、30人程。
敷地の中央に建物が配置され、建物を庭が取り囲むような形になっている。
園庭は、先の記事で述べたような野外保育園の庭の特徴を有している。
ここで、敷地の広さと敷地の用い方を日本の典型的な園庭と比較してみると…。
(日本の園庭は、私の地域にある H保育園を典型例として取り上げています。)
左側の航空写真はV 野外保育園、右側が日本の典型例。
赤枠が敷地、青枠が園舎を示している。
日本のH保育園では園児数が V 野外保育園の2倍近くなので、敷地や建物の広さを比較すると、一人あたりの面積はそれほど差がない。
(V 野外保育園は3歳からの受け入れで、H保育園には小学生の学童放課後クラブ用の部屋や未就園児の一時保育室も併設されている、という違いはある。)
けれど決定的に違うのが、敷地の用い方だ。
V 野外保育園の平面図は次のようだ。
園舎を取り囲む庭には、至る所に遊びと学びの場所が設けられ、植栽も園庭中に施されている。
一方、日本の園庭の典型例として取り上げたH保育園の園庭は、
運動場が庭の中央を大面積で占め、脇に遊具と数本の木が配置されているだけだ。
H保育園、園舎側。
園舎から見た園庭。

ちなみにこのH保育園は公立だが、園舎は幼児施設を専門とした建築事務所によって設計され、園児の生活空間が熟慮された良い内部となっている。
建物の良さとは対照的なこの園庭を見ると、日本で園庭環境がいかにおろそかになっているかが分かる。
園庭環境を大切にした保育園・幼稚園ももちろんあるのだが、そういった考え方は現在の時点では決して一般的ではない。
(ぜひ皆さんの地域の園庭をご覧になってみて下さい。おそらくほとんどの園で、遊具や木の数に多少の差はあれど、H保育園と同じような庭の作りになっているかと思います。)
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続いて、V 野外保育園の園庭の様子を詳しく紹介します。
(つづく)