森のムッレ幼稚園の園庭には、これまで紹介して来た場所以外に、自然教育にとって大切な場所が設けられている。
”集う場”は、その自然教育にとって大切な場所のひとつだ。
ここは、昼食やおやつの時間に使われるほか、サムリング(集会)といってスウェーデンの幼稚園では一般的な皆で歌ったりお話をする時間に用いられる。
そして、ムッレ幼稚園ではディスカッションを重視しているため、一般の幼稚園以上に”集う場”が園庭に設けられている。(ディスカッションを重視する理由 参照:ムッレ教室の自然の階段)
”集う場”は皆で囲って座れるように円形や四角で設けられていることが多い。
菜園では、一年を通して植物を育てる事や植物の変化、食を学ぶ。
植物は冬の間室内で育て、暖かくなってくると菜園に植える。
もちろん、収穫した野菜は昼食やおやつの時間に食べる。

菜園の一角には、ちょっとした休憩スペース。
こういったスペースが加わるだけで、菜園が ”野菜を育てる場所” としてだけでなく、”楽しみのある空間” になる。
(菜園を「自然を楽しむ場所」と捉え、菜園内に休憩スペースを設けるのはスウェーデンで一般的です。参照:市民農園 1, 2, 3, 4, 5)
菜園には各月ごとの菜園での活動が写真で飾られており、自分たちで育てて来た喜びや植物の一年の変化を実感し易いよう工夫されている。
木に設けられた鳥の巣箱は、四季の中で動物を学ぶために森のムッレ幼稚園では多く設けられている。
加えて、ウートシクテン幼稚園では鶏小屋も設けられている。
鶏を飼うことを通して、”命と死”について考えていく。
(森のムッレ幼稚園の中でも、鶏小屋を持つ園は多くありません。)
小屋は10×3㎡程もあり、広い。小屋内の土は柔らかく(踏み固められておらず)、小屋の周囲には木々が茂り、鶏はのびのびと暮らしている。
こうした良い飼育環境から、鶏が人と同じ”いのち”として丁寧に扱われているのが分かる。
鶏の世話は、園に通う子の中で近所に住む子と親が交代で行っている。
毎朝、子供たちが卵をもらいに行く。
毎朝、子供たちが卵をもらいに行く。
そして、コンポストがある。
スウェーデンの幼稚園には環境教育が多かれ少なかれ取り入れられており、その最たる取組みとして、ほとんどの幼稚園でコンポストが設置されている。コンポストには園から出る調理ゴミや食べ残しが入れられる。ただ、多くの一般の幼稚園では菜園を持たないため、園内での食物資源の循環は出来ておらず、業者に回収してもらっている。
森のムッレ幼稚園では、多くの園で菜園を持っているため、園内で食物資源の循環が行われている。
さらに、ウートシクテン幼稚園では鶏を飼っているため鶏糞を入れることが出来、より栄養価の高い土を作っていく事が出来る。
スウェーデンは乾燥しているため、写真のようなオープン型のコンポストも多く用いられている。(参照:枝で編んだコンポスト)
写真は、コンポストから出来た堆肥を置いておく場所。
これらの堆肥づくりにも父兄が関わっている。
スウェーデンでは両親とも働いている(または勉強中)家庭が多いため、週末に親たちが集まって堆肥づくりや園庭の遊具を作ったり改修をしている。
週末といえば、どの親も「子どもと何をして遊ぼうか」と困った経験があるだろう。
森のムッレ幼稚園のように、親と子どもらが週末に集まって遊びながら園庭を良くしていくことは、週末の過ごし方として有意義かつ楽しいように思う。
コンポストに加え、リサイクルにも積極的に取組んでいる。
園庭に置かれたリサイクル用ゴミ箱は、瓶(色付き/透明)・磁器・金属・プラスチック袋など細かく分けられ、子供たちが分別し易いようにゴミ箱ごとに絵付きで表示されている。
最後に、工作小屋がある。
森のムッレ教育は、自然の仕組みや人が自然に与える影響を理解し、最終的には「行動して社会に貢献する」ことを目指す。(参照:森のムッレ教室の自然の階段)
環境や社会を作ってゆく行動の第一歩として、自分で体と頭を動かして自分の周りの物を作っていく事は大きな意味がある。
「自分はどんな物や環境が欲しいのか?より良い形(在り方)はどのようか?作った物によってどんな結果がもたらされたのか?」
物を作る事は、シンプルな行動だけれど、その中から得られる事はとても大きい。
そして、
「自分の力で作った物が自分の周りを変える。自分の周りをより良くしていく事が出来る。」
この感覚を体感していく事は、作った物がどんなに簡単で小さな物であっても、より良い社会や環境を作っていく上でとても大切な事だと思う。
写真は、園庭にある工作小屋。